価値の生成と消失 - 実物資産の調達 - 情報

 情報の経済的取引は、情報の複製を伴います。これは、経済的取引と同時に情報という実物資産が増えていくことを意味します。経済的取引と同時に実物資産が増えていく点が、他の実物資産(マテリアル、用役、サービスによるリソース)との最大の違いです。

 何故そうなるかというと、情報というものが非占有だからです。

 電子書籍の購入、電子化された論文や報告書の購入、ソフトウェアのダウンロード購入、いずれの場合も、購入者の手元の端末には購入した情報が残ります。しかし、同時に配信者のデータサーバのなかにも、それらの情報は残ったままです。複製に上限回数はありません。

 映画やドラマやゲームに登場するような情報屋を、思い浮かべてもいいかもしれません。あなたの眼の前に情報屋がいます。あなたは、情報屋から何らかの情報(好きな情報を思い浮かべて下さい)を教えてもらい、あなたはその対価を情報屋に支払います。あなたと情報屋との経済的取引はこれで終了したわけです。さて、経済的取引を行う前と後で、情報はどうなっているか。経済的取引を行う前は、情報屋の頭の中にしかなかった情報が、経済的取引を行った後は、情報屋の頭の中とと購入者であるあなたの頭の中の2箇所に増えているわけです。

 他の実物資産では、経済的取引ごとに実物資産が増えるということはありません。

 マテリアルや用役における経済的取引では、取引前と後でマテリアルの数が増えることはありません。

 リソースによるサービスの経済的取引は、リソースの占有を伴います。誰かが占有しているリソースは、別の誰かが使うことができません。