2022-01-01から1年間の記事一覧

【閑話休題】いくつかの疑問とその回答

この項では、経済に関するいくつかの疑問について、これまでに述べてきたことを基に、筆者自身の考えを述べる。 脱成長は目指すべきか? 回答:目指すべきではない。 そう考える理由:いま、私たちが生きているこの世界はユートピアではない。気候危機は解決…

【閑話休題】家計、企業、利益

本稿は、貨幣の総量が一定の社会における企業利益について検討します。この議論を行う上で、次の前提を置きます。 (1)ある国家を想定し、その国内のみの企業活動を検討の対象とする。 (2)企業及び家計が存在する。ここでは、一定期間の間に何らかの形で人を…

財政支出と実物資産 - 投資の場合

投資の場合 経済的主体を国家とした場合における「緊縮策を取る必要がない」経済的取引とは、投資の目的が次に示すいずれかである場合です。 ・流出する外貨の削減 一例として、風力発電所のタービンブレードの輸入が該当します。これらの部材を海外から輸入…

財政支出と実物資産 - 「消費」と「投資」

まず、財政支出によって生成された貨幣を投資に使うか、消費に使うかが考えられます。さて、経済的主体とは、その経済的主体の外部から実物資産を調達し、内部で実物資産の変換を行い、別の実物資産として外部に出力する機能を持つものです。ここで、ある経…

財政支出と実物資産

前稿にて「ある経済的主体と、その経済的主体が任意の資産の生産量を指定できる場合、その経済的主体は緊縮策を取る必要がない可能性がある」と書きました。では、経済的主体を国家と置き、資産を貨幣と置いた場合、「緊縮策を取る必要がない」場合とはどの…

借金と緊縮財政 - 経済的主体、借金、緊縮財政

一般的な用法として、「借金」という言葉を使うとき、ある経済的主体が、その経済的主体の外部の別の経済的主体に対して、外貨建てで負っている債務を指します。そして、借金を返済するということは、ある経済的主体の外部へ外貨が出ていくことを指します。 …

負の価値の取扱

ここまでの話は、実物資産が正の価値を持つ場合の話でした。しかし、現実の実物資産は、負の価値を持つ場合があります。このような負の価値を持つ実物資産の例として、次のようなものがあげられます。 マテリアル ・有害物質(有機水銀[1]、カドミウム[2]、6…

経済的主体 - 貨幣を用いた経済的取引

経済的主体は貨幣を用いて、他の経済的主体と経済的取引を行います。この経済的取引は、貨幣と実物資産の交換というかたちをとります。この交換については、実物資産と経済的取引の項で詳細を述べました。 ある工場(経済的主体)と、その工場に部品を納入する…

経済的主体 - 貨幣の蓄積

経済的主体は、貨幣を蓄積します。この蓄積された貨幣は銀行預金や企業の内部留保、外貨準備高と言った形をとります。家計では、財布の中の現金紙幣や、銀行預金と言った形をとります。企業では、現金での内部留保と言った形をとります。国家では、外貨準備…

経済的主体 - 貨幣の発行

経済的主体は、貨幣の発行機関を、その内部に持ちます。そして、そして発行した貨幣をその経済的主体の内部で流通させます*1。 家計を一つの経済的主体とみなした場合、家計はその中に、モズレーの名刺を発行する父親、肩たたき券を発行する子供という貨幣の…

経済的主体 - 実物資産の蓄積

経済的主体は、実物資産を蓄積する機能を持ちます。つまり、マテリアル、リソース、情報を蓄積します。 例えば、工場を経済的主体とみなしたとき、工場はマテリアルを蓄積します。この蓄積されたマテリアルは在庫と呼ばれます。これらの在庫は、部品在庫や製…

経済的主体 - 実物資産の調達・変換・出力

経済的主体は、経済的主体の外部から実物資産を調達し、経済的主体の内部で実物資産を変換し、経済的主体の外部に出力します。入力と出力のみで、変換がない場合もあります。 たとえば、工場は経済的主体とみなせます。工場は、その外部から実物資産(マテリ…

経済的主体

いままでに、経済的主体という単語を、断りなく使ってきました。経済的主体の例として、個人、家計、企業、親会社と子会社からなる企業グループ、政府、国家が挙げられます。また、経済的主体は、その内部に複数の経済的主体を持つことが可能です。例えば、…

貨幣の生成(その2)

銀行預金の発行 -政府による支出- 政府支出による貨幣の生成について、より詳しく確認していきましょう。この手順については、中野剛志*1、井上智洋*2、L・ランダル・レイ*3、シェイブテイル*4など様々な論者が議論していますし、私自身も別記事で検討しまし…

貨幣の生成(その1)

これまでに、実物資産とその経済的取引について説明しました。次に、実物資産は外部からの調達や複製によって生成されるということを説明しました。また、外部への流出や消去により、消失することも示しました。そして、実物資産は価値を持ち、その価値もま…

価値と貨幣

いままでに説明してきた価値のイメージは次のようなものです。 まず、実物資産が存在します。実物資産については既に述べたとおりです。次に、これらの実物資産を、価値観というスポットライトで照らします。このスポットライトでできる影が価値です。 実物…

価値の生成と消失 - 実物資産の消失 - 情報

経済的取引を行うたびに、情報は複製されます。しかし、複製された情報は日々消失しています。 書籍には様々な情報が記載されていますが、この情報は日々消去されています。資源ごみとしてゴミ回収に出される。火災により焼失する。電子書籍サービスがサービ…

価値の生成と消失 - 実物資産の消失 - リソースによるサービス

実物資産と経済的取引の項目でも触れたように、リソースが提供する価値は、リソースの占有と同時に提供が開始され、リソースの解放と同時に提供が終了します。通常の経済的取引において、リソースによるサービスは、価値の生成と消失を繰り返しています。こ…

価値の生成と消失 - 実物資産の消失 - マテリアル、用役

マテリアル マテリアルが経済的取引の対象ではなくなるタイミングは、どのタイミングでしょうか?経済的取引の定義を確認しましょう。マテリアルの経済的取引とは、マテリアルの「所有権の移転」でした。マテリアルを「人間社会の外部から調達」したとき、マ…

価値の生成と消失 - 価値観の変化

実物資産に対する価値観は、時間とともに変化します。あるときは有用と判断され、あるときは有害と判断され、あるときはそのどちらでもないものと判断されます。価値観の変化は、短期的な場合もあれば、長期的な場合もあるでしょう。 短期的な価値観の変化は…

価値の生成と消失 - 実物資産の調達 - 情報

情報の経済的取引は、情報の複製を伴います。これは、経済的取引と同時に情報という実物資産が増えていくことを意味します。経済的取引と同時に実物資産が増えていく点が、他の実物資産(マテリアル、用役、サービスによるリソース)との最大の違いです。 何故…

【閑話休題】フリーランチは存在するか?

存在する、が私の見解です。 ここで、フリーランチを定義します。フリーランチを、購入者が実物資産を取得しているにも関わらず、生産者に対して、いかなる形でも貨幣という形で対価を支払っていない経済的取引、と定義します。貨幣という形で対価を支払わな…

価値の生成と消失 - 実物資産の調達 - リソースによるサービス

リソースによるサービスでは、あるリソースは、リソースの占有と同時にその価値を提供し始め、リソースの開放と同時に、価値の提供は終わります。あくまでも、リソースは、占有されることそれ自体によって、価値を提供することに注意して下さい。占有された…

価値の生成と消失 - 実物資産の調達 - 用役

用役について検討します。用役として電気、ガス(プロパンガス、都市ガス)、上水道、圧縮空気、蒸気、洗浄水、熱供給用の熱などが該当します。これらのサプライチェーンの上流に何があるか検討しましょう。 さて、これらの用役の最上流には何があるでしょうか…

価値の生成と消失 - マテリアル

価値の生成と消失 価値は、どのような要因で生成し、そして消失するのでしょうか。本項目では、価値の生成と消失について検討します。 まず、価値が生成する理由は、次の二つの理由が考えられます。 a-1. 実物資産が調達された。 a-2. 経済的主体が、自らの…

価値観、価値、価格 - 価値と価格/実物資産の交換

価値と価格 実物資産には、価値に応じた価格が付きます。異なる経済的主体(家計、企業、国家など…)同士において経済的取引を行う場合、一般的には、実物資産と貨幣を交換します。このとき、実物資産の価値と貨幣の額面は一致させます。 実物資産の交換 経済…

価値観、価値、価格 - 価値観と価値

価値観と価値 実物資産には価値があります。この文章では、「価値」の定義として、実物資産が持つ「「よい」といわれる性質」*1を採用します。しかし、ただ漠然と「よい」と言われるだけでは困るでしょう。何が「よい」のか定義されていないからです。そのた…

実物資産と経済的取引 - 「実物資産の組み合わせ」

実際の経済的取引は、複数の実物資産が組み合わさって提供されています。 外食産業 「料理」という「マテリアル」と、食事場所という「リソース」を一定時間占有させる「サービス」を組み合わせ、顧客に提供することで対価を得ています。食事代金には、料理…

実物資産と経済的取引 - 「情報」

説明 「情報」とは、抽象的な「意味」を持つものです。他の実物資産と比較した場合、情報は次の特性を持ちます。 ・情報の占有ができない。 ・「在庫」に該当する概念がない。 ・経済的取引とは、利用権の取得もしくは、情報の複製を意味する。 Amazon Kindl…

【閑話休題】財政健全化に関する私見

文藝春秋 2021年11月に掲載された通称「矢野論文」-「財務次官、モノ申す」-は多方面で議論を巻き起こした[1][2]。この論文の骨子をまとめると以下のようになる。 現在、国の債務は地方と合わせて一千百六十六兆円に上り、これはGDPの二・二倍にあたり、先進…