財政支出と実物資産 - 投資の場合

投資の場合

 経済的主体を国家とした場合における「緊縮策を取る必要がない」経済的取引とは、投資の目的が次に示すいずれかである場合です。

 

・流出する外貨の削減

 一例として、風力発電所のタービンブレードの輸入が該当します。これらの部材を海外から輸入する際、確かにドルが必要になります。しかし、風力発電所の運用により、LNG火力の稼働率が減少し、LNG消費量が削減され、LNGの輸入が減少し、国外に流出するドルが削減されます。投資に使ったドルより、削減されたドルが大きければ投資は成功です。

 これらの部材が国内から調達された場合は、財政支出による貨幣の発行と赤字国債の発行が同時に行われます。そして、風力発電所の運用により、ドルが削減されます。

 

流入する外貨の増加

 一例として、輸出を目的とした工場の建設などがあげられます。投資により、一時的にドルが必要になったとしても、工場の運用、生産、輸出によって、投資額以上の外貨を稼げたのならば投資は成功です。

 

・(調達元を問わず)所有権が移転・消費・占有される実物資産の削減

一例として、断熱工事作業・LED照明への入替・低消費電力機器への交換による電力消費量の削減が考えられます。新しく設備投資が必要ですが、運用することで、別の実物資産(例えば、消費電力)の削減が期待できます。

 

・実物資産の生産能力/調達能力の向上

ロボット掃除機、食器洗浄機などによる自動化。これらの自動化により、家事にあてる時間を減らし、業務にあてる時間を増やすことができると考えられます。

リサイクル関係(選別機、剥線機など)、焼却灰からの金属の回収、回生ブレーキ、ゴミ焼却炉の発電設備、小水力発電設備など、既存の設備では廃棄されていたマテリアルや熱、エネルギーを回収することで、実物資産を増やすことができると考えられます。   

休漁期間の生活補填費用。漁場を回復させる最も簡単な方法は、そもそも漁をしない、ということが指摘されています。その場合、休漁期間中の漁師の生活を補填することは必要な投資と考えられます。

 

2022.09.17 新規作成

2022.09.19 更新